遺言書の書き方

遺言書を作成するうえでのポイント(2)


このページは、特別方式の遺言・自筆証書遺言の作成・公正証書遺言の作成・秘密証書遺言の作成・遺言の撤回及び取消し・遺言書の検認・執行に関する基礎知識をまとめています。
「遺言書の書き方」は、自筆証書遺言・公正証書遺言の雛形・様式・文例・書式・テンプレート・フォーマット・サンプルや作成する上でのポイントをご提供しています。

遺言書を作成するうえでのポイント(1)

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秘密証書遺言

秘密証書遺言の作成方法
秘密証書遺言は、遺言者が、遺言に内容を記載した遺言書に署名押印して作成します。(自筆証書遺言と異なり、署名以外はワープロ等自筆である必要はありません。)
その遺言書を封筒に入れ、遺言書に押印した印で封印した上で公証役場に持参します。
公証人と証人2人の前にその遺言書の入った封書を提出し、自己の遺言書である旨及び住所氏名を申述します。
公証人が、遺言書の入った封書が提出された日付と遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人2人が署名押印して作成します。

秘密証書遺言の注意事項
秘密証書遺言は、公証人が遺言書の作成に関与しますので、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にできます。しかし、公証人は遺言書の内容の確認をしませんので、秘密証書遺言の内容に法律的な不備があった場合は、遺言が無効となってしまう危険性があります。
秘密証書による遺言は、秘密方式遺言としての条件に欠けるものがあっても、自筆証書遺言としての条件を満たしているときは、自筆証書による遺言としてその効力を有します。
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所での検認手続きが必要です。

秘密証書遺言のメリット・デメリット

秘密証書遺言のメリット
・遺言書を封印した後に公証役場で手続きをするため、遺言の内容を他人に知られることがない。公証人及び証人2人が遺言書の作成に関与するので、遺言者本人の遺言であることを明確にできる。

秘密証書遺言のデメリット
公証人は遺言書の内容確認ができないので、遺言の内容に法律的な不備があった場合は、遺言が無効となってしまう。

特別方式の遺言

特別方式の遺言は、「死亡の危急に迫った者の遺言」、「伝染病隔離者の遺言」、「船舶遭難者の遺言」、「在船者の遺言」のように、普通方式による遺言では間に合わない応急時や隔絶地での遺言の際に利用されます。

【特別方式の遺言】 死亡の危急に迫った者の遺言
疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して遺言をすることができます。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければなりません。そして、遺言の日から20日以内に、証人の一人又は利害関係人が家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じません。

【特別方式の遺言】 伝染病隔離者の遺言
伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができます。
遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を押さなければなりません。

【特別方式の遺言】 在船者の遺言
船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができます。
遺言者、筆者、立会人及び証人は、各自遺言書に署名し、印を押さなければなりません。

【特別方式の遺言】 船舶遭難者の遺言
船舶が遭難した場合において、船舶中で死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができます。証人は、遺言の趣旨を筆記して、これに署名押印し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じません。

自筆証書遺言の作成方法

「自筆証書遺言」に関しては、民法で次のように定められています。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。
これらの要件を満たさない遺言書は無効になってしまいますので、注意が必要です。

その他、自筆証書遺言を作成する上での注意事項・ポイントは以下のとおりです。
用紙
遺言書に使用する用紙は自由です。
(原稿用紙、便せん、コピー用紙等)

筆記用具
遺言書を書くための筆記用具は自由です。
(ボールペン、万年筆等)
自筆証書遺言は全文自筆で書かなければならないので、
ワープロ書きの遺言は無効です。

使用する文字
ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字のすべてが使用できます。

使用する印鑑
遺言書に使用する印鑑に関して、実印でなければならないという制限はありませんが、トラブル防止のために実印を
使用すべきです。

添付書類
自筆証書遺言に財産目録等を添付する場合には、その添付書類も自筆でなければなりません。

日付
自筆証書遺言には、必ず日付を記入しなければなりません。
日付を記入する場合には、「平成〇年〇月〇日」「平成〇年の誕生日」のように日付を特定できる記載方法でなければなりません。
「平成〇年〇月吉日」のように日付を特定できない記載方法では、遺言が無効になります。

封筒
法律に「自筆証書遺言は封筒に入れ封印しなければならない」という定めはありませんが、改ざんを防ぐために封筒に入れ封印をするケースがほとんどです。
封筒に入れられた遺言の開封は、家庭裁判所において行わなければなりませんので、封筒には必ず、「開封厳禁、本遺言書はわたしの死後すみやかに家庭裁判所に提出し検認をうけること」等と書いておきましょう。

公正証書遺言の作成方法

公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述し、公証人に作成してもらいます。
公正証書による遺言は、原本が公証役場に保存されますので、遺言書が破棄、隠匿や改ざんをされたりする心配がありません
また、日本公証人連合会において、遺言書を作成した役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等がコンピューター管理されていますので、相続人等の利害関係人は照合することができます。

遺言書の中で最も信頼性の高い「公正証書による遺言書」を作成する方法は次のとおりです。
1(事前準備) 法定相続人を調べる(誰が相続人かを確認しておく)
2(事前準備) 財産の内容を確認する(預貯金・不動産・動産など)
3(事前準備) 誰にどの財産を与えるかを決める
4(事前準備) 証人2人に立ち会いを依頼する
 以下の人は証人にはなれません
 未成年者
 推定相続人、受遺者とその配偶者、直系血族
 公証公証役場の書記官や従業員人の配偶者や四親等以内の親族
5(打ち合わせ) 公証人と打ち合せする
6(打ち合わせ) 公証人が遺言書の文案を作成してれますので、その内容を確認する。
7( 作 成 ) 証人2人とともに公証役場に行き公正証書遺言を作成する。

公証役場に持参するもの
公正証書による遺言を作成する際に、公証役場に持参するもの
・遺言者の印鑑証明書 1通
・遺言者の実印
・遺言者と相続人の戸籍謄本
・相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
・登記簿謄本及び固定資産評価証明書(財産が不動産の場合)
・相続させる財産の内容が分かる資料(預貯金等の場合)
・証人の認印
※詳細は、担当の公証人にご確認ください。


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遺言の撤回及び取消し

遺言の撤回及び取消しについて
「遺言の撤回」について民法では次のように定めています。

遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。

ポイントをまとめると次のようになります。
遺言書を撤回することができるのは遺言をした本人だけであるということ
遺言者が遺言を破棄したら、その遺言は撤回されたことになるということ(公正証書遺言の場合は、遺言書の破棄はできません。)
前の内容と異なる遺言書を作成すれば、前の遺言は撤回されたことになるということ
(秘密証書遺言の場合は、内容が秘密なので、遺言書の破棄による方法で遺言を撤回します。)

自筆証書遺言の取り消し(撤回)方法 遺言書を破棄する・遺言を取り消す旨の遺言書を作成する
公正証書遺言の取り消し(撤回)方法 遺言を取り消す旨の遺言書を作成する
秘密証書遺言の取り消し(撤回)方法 遺言書を破棄する

撤回された遺言の効力について
撤回された遺言の効力について民法では次のように定めています。
撤回された遺言は、その撤回の行為が、撤回され、取り消され、又は効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しない。ただし、その行為が詐欺又は強迫による場合は、この限りでない。
つまり、一度取り消された遺言の効力は、詐欺又は強迫による取り消しでない限り、回復しないということです。

遺言書の検認

遺言書の検認について
亡くなられた人の遺言書を発見したとき、その遺言が「封印されている」場合は、勝手に開封してはいけません。
なぜならば、民法において「遺言書を発見した場合は、家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない」と定められているからです。
(公正証書による遺言については、適用されません。)

検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外において遺言書を開封をした者は、五万円以下の過料に処せられますので、注意が必要です。
「遺言書の検認」とは、家庭裁判所が遺言書の内容と存在(その遺言書が確かに遺言者の作成したものであるということ)を確認する手続きです。そのため、遺言書の内容の正当性が判断されるわけではありません。
家庭裁判所において「遺言書の検認」を請求するためには、「遺言書検認申立書(用紙は家庭裁判所にあります。)」に必要書類を添付して提出します。後日、相続人、利害関係者立会いのもとで検認が行われ、検認調書が作成されます。

遺言書の検認の申し立てについて
申し立てをする人
遺言書の保管者・遺言書を発見した相続人

申し立て先
遺言者(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

申し立てに必要な費用
遺言書(封書の場合は封書)1通につき800円分の収入印紙
連絡用の郵便切手(金額・枚数は、申し立てをする家庭裁判所で説明してくれます。)

申し立て手続きに必要な書類
申立書(1通)裁判所のホームページで入手可能です。
申立人、相続人全員の戸籍謄本(各1通)
遺言者の戸籍(除籍、改製原戸籍)(出生時から死亡までのすべての戸籍謄本)各1通
遺言書の写し(遺言書が開封されている場合)
※このほかの資料の提出を求められることがありますが、家庭裁判所で説明してくれます。

遺言執行者とは

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有し、遺産の管理や相続の処理を行います。
遺言執行者がいない場合は、相続人全員で相続手続きを行うことになります。
遺言執行者は、「相続財産の目録」を作成し相続人に公布しなければなりません。そして、その財産を管理し、遺言を執行(相続人への分与や登記の移転など)します。
このように、遺言執行者は相続財産を取り扱うという大切な任務があるので、未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができません。


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